日本のプロ野球に、インド出身の選手が初めて誕生しました。7月27日、西武がアクシャイ・モーレ投手と2026シーズンの育成選手契約を締結したと発表しています。NPB球団とインド出身選手の契約は、これが史上初です。
モーレ投手の経歴は、野球選手のそれとしては異色です。2003年12月生まれの22歳で、身長194cm・体重88kgの恵まれた体格。もともとは柔道の選手で、全国大会で準優勝の実績を持ちます。競技を野球に移してからまだ6年ほど。それでも前所属のベースボールユナイテッド・ムンバイで頭角を現し、今年6月に西武が実施したトライアウトで将来性を高く評価されました。長身から投げ下ろす最速150キロの直球に、フォークやシンカーを交える右腕です。柔道で鍛えた体幹と、伸びしろの大きさを買われての契約になります。
今回の契約は、球団が掲げる「西武ライオンズ海外戦略」の一環に位置づけられています。従来のアメリカ・中南米だけでなく、まだ野球が発展途上の国から原石を掘る。その最初の一手が、人口14億のインドから来た22歳でした。競技人口の裾野がこれから広がる市場に、いち早く杭を打つ狙いも読み取れます。当たれば独自ルートになり、外れても損失は小さい。育成契約という入り口は、その実験にちょうど合う器です。
編成の観点でも、この動きは西武らしさと重なります。年齢×ポジション表を開くと、支配下の外国人は4人で広島と並ぶ最少の部類。一方で24歳以下は27人と12球団で最も多く、自前の若手をとにかく数で並べる路線がはっきり出ています。モーレ投手が入る育成の枠は32人と厚く、そこへ「新しい国から育てる」という蛇口がもう一本足された格好です。即戦力を足す動きではなく、時間をかけて原石を磨く前提の一手です。
野球歴6年の柔道家が、150キロの球をどこまで伸ばせるのか。育成のマウンドで見せる一球ごとに、前例のない道の輪郭が引かれていきます。